リチウムイオン二次電池の再利用について

 資源の有効活用の視点から、リチウムイオン二次電池に関しても再利用を推進する考え方が拡大しています。リチウムイオン二次電池はポータブル機器の電源として発展してきましたが、地球温暖化に伴う低炭素社会への転換がスタートする中、蓄電装置や自動車等の駆動系への応用などエネルギー分野へもその用途が拡大しています。

 しかしながらリチウムイオン二次電池の発展は、高エネルギーがもたらす利便性とそれゆえに生ずる安全性の確保のジレンマを、極めて微妙なバランスを取りながら、狭く険しい道のりを乗り越えてきた歴史であったと言えます。従って、リチウムイオン二次電池はその特性上の長所と短所を十分理解の上、その取扱いに関して安全上の十分な対策が必要です。

 今回、世界に先駆けてリチウムイオン二次電池を開発・量産し、技術・品質・安全性で貢献してきた日本の電池工業会として、リチウムイオン二次電池の再利用に関して検討を重ね、その考え方を下記にまとめました。

 その考え方は、

  1. 国民・消費者の安全の確保
  2. 資源のリサイクル・有効活用
  3. リチウムイオン二次電池に関係する事業者の経営リスク低減と事業の発展

を基本としており、リチウムイオン二次電池が継続して世の中へ貢献することを祈念する次第です。

リチウムイオン電池の再利用について

2014年2月21日
一般社団法人 電池工業会

1.再利用についての考え方

 
民生用/産業用
正規使用用途
(当初から複数の使用を想定している場合も存在する)
正規使用用途外の使用
(当初から想定されていない正規使用とは異なる用途)
電池システム・組電池
(電池パック、モジュールなどと専用の保護機能※5を有するもの)
使用可
※1
使用禁止
※3
単電池
(セルなどへの専用保護機能※5を取り除いたもの
使用禁止
※2
使用禁止
※4

※1
 リチウムイオン電池を用いたシステム※6の安全性を担保する為、現在リチウムイオン電池(電池システムも含む)とリチウムイオン電池を用いた機器は、1対1の専用の組み合わせでシステム※6が成り立っている。
上記、1対1の専用の組み合わせの関係を担保しつつ、1つの共通な電池を複数の機器(用途)で共用使用する構成で、正規使用用途としてシステム※6を成立させることは可能である。

※2
 電池パック、モジュールを単電池まで分解後、再度組電池を再構成し、これを用いて、正規使用用途のシステム※6を再構成して使用するもの。

※3
 電池パック、モジュールの状態を維持し、これを用いて、正規の使用用途外の用途のシステム※6を再構成して使用するもの。

※4
 電池パック、モジュールを単電池まで分解後、再度組電池を再構成し、これを用いて、再度正規使用用途外のシステム※6を再構成して使用するもの。

2.「正規外製品使用」を禁止とする理由

リチウムイオン電池を用いたシステム※6の安全性は、単電池、並びに、制御機器並びに、それらの密接な相互安全機能の組み合わせ、並びに、使用環境・使用用途を想定した安全性の検証を行い安全を担保している。
そのためには、バッテリメーカーと機器メーカーの間で、十分な情報交換とリスクアセスメントを行った上で製造・販売されるものであるため、その検証が損なわれる非正規領域の製品での使用は禁止とする。

3.「組電池を単電池まで分解後、再度組電池を再構成しての使用」を禁止とする理由

一旦使用したシステム※6は、電池パック、モジュールおよびこれを構成する単電池(単セル)毎に、容量劣化や経年変化が個別に異なり、分解した単電池を電池パック、モジュールおよび電池システムに再編成する場合、安全を担保することが、現在の技術では難しいため禁止とする。

4.電池工業会の考え方

 上記の2、3により、電池工業会として、表中の領域※2~4おける再利用※7に関しては、安全を担保することができず、消費者・社会に不安全要因をもたらす危険が存在する為、再利用を禁止とする。
しかしながら、※2~4の領域であっても、各社の努力により将来的に安全を確保した製品並びに技術開発を行うことを妨げるものではない。

<語句の説明>

※5
 専用の保護機能:BMU(バッテリマネージメントユニット)BMS(バッテリマネージメントシステム)等、リチウムイオン電池の安全を監視・制御する機能のことを指す。電池パックやモジュールに内蔵される場合と、リチウムイオン電池を使用する機器側に搭載される場合もある。

※6
 システム:リチウムイオン電池の安全を担保するために構築した、電池システム(組電池)と電池を使用する機器全体を指す。

※7
 再利用:一旦使用された製品を回収し、必要に応じ適切な処置を施しつつ製品として再使用をする。または、再使用可能な部品を利用する(経済産業省 3R政策より引用)。即ち、「適切な処置を施した」再利用は表中※1(組電池を正規製品使用)のケースのみとなる。

※8
 その他:JISC8712、JISC8715参照

 JISの詳細は、日本工業標準調査会(JISC:Japanese Industrial Standards Committee)
 http://www.jisc.go.jp/ 参照

— 以上 —

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