自動車用バッテリーのQ&A

1.バッテリー液の成分は?

バッテリー液(電解液)は、無色透明の硫酸で、充電された時の硫酸濃度は約37%(比重1.280/20℃)です。この液体は、腐食性が強く、金属を酸化させたり皮膚炎を起こしたりするなど非常に危険です。したがって、バッテリーを取扱う場合には、十分な注意が必要です。万が一、電解液が外部に流出または人体に付着した時の応急処置は、速やかに多量の水を用いて硫酸分を洗い流すことが最も重要です。機器に付着した場合は、硫酸分を湿った布で拭い取ってください。

2.なぜ液が減るの?

この現象は、主に充電中に起こります。電解液が減ってしまうのは、バッテリーが持つ容量以上に電気エネルギーが加えられた時(過充電時)、液中の水が酸素ガスと水素ガスに分解されてしまうためです。特に高温の場合には、液が減る量も多くなります。このようにバッテリー使用時は、液が減りますので液量の日常点検が必要です。また、液の補充は精製水(市販のバッテリー補充液)を入れます。

3.なぜバッテリーあがりを起こすの?

バッテリーあがりの現象は、次の項目で起きる可能性があるため注意が必要です。詳しい説明は「バッテリーあがりについて」を参照ください。

  1. 単純放電
    バッテリーの電気量を多く使った(例えば、エンジンンを切った後のドアの閉め忘れなど)ことにより、放電が進みエンジン始動に必要な電気エネルギーが失われた場合。
  2. バッテリーの劣化(寿命)
    バッテリーを取り付けてから3年以上経過している場合。
  3. 使われ方
    車を長期間使用しない場合シビアコンディションした場合。

4.バッテリーの正しい取扱いは?

取扱い上の誤りによる事故(特に爆発)を防止するためには、次の点に注意する必要があります。

  1. バッテリーには、たばこの火などを近づけない。
  2. 金属工具をバッテリー端子に接触させ、スパークを発生させない。
  3. バッテリー液量はLOWER LEVEL(最低液面線)以下で使用しない。
  4. バッテリーを傾けたりして皮膚や衣類に電解液をこぼさない。
  5. 乾燥した季節は、バッテリーを取扱う前に、バッテリー以外の金属物に触れ静電気を逃がす。
  6. 充電器のコンセントを差し込んだまま、充電器とバッテリー接続を外さないこと。

ワンポイントアドバイス:接続は(+)と(+)、(-)と(-)とする。
ワンポイントアドバイス:充電器のコンセントを抜かずに、充電器とバッテリーの接続を外すとスパークが発生する場合があり、大変危険です。

5.バッテリーが凍ったらどうなるの?

バッテリー液(電解液)である硫酸は、バッテリーの放電により比重(濃度)が低下すると凍ることがあります。バッテリー液が凍る温度は硫酸の比重により 異なります。
バッテリーの満充電時の電解液比重は1.280※くらいでは凍りにくいですが、放電して比重が1.100※くらいに低下すると、凍結温度は-10℃前 後となり凍りやすくなります。
また、さらにバッテリーが放電し、比重が1.000※付近まで低下すると0℃付近で凍結します。
したがって、バッテリーを過放電状態で放置すると、バッテリー液の凍結時の体積膨張によりバッテリーの電槽を破損(凍結破損)させる場合があります。
バッテリーは放電したまま放置しないで、必ず充電しておくことが必要です。

※電解液比重は、20℃換算値とする

硫酸の比重と凍結温度

(硫化水素発生の警告)
6.硫化水素は鉛バッテリーがどのような時に発生するのですか? メカニズムは?

鉛バッテリーが寿命に近い場合、補水されずに液量が不足している場合、過充電を続けた場合、鉛バッテリーが高温の状態の場合など、複数の条件が重なると、充電によってバッテリー液である硫酸が還元されて硫化水素が発生します。鉛バッテリーを正しく使用した際には発生しません。

7.硫化水素は鉛バッテリーからどれくらい発生するのですか?

硫化水素の発生する量は使用条件によって異なり、致死量に至る場合もあります。正常な鉛バッテリーを正しく使用した際には発生しません。

8.硫化水素を発生させないためには、どのようにしたら良いですか?

鉛バッテリーの液量をこまめに点検し、必要により補水してください。自動車用鉛バッテリーの推奨交換時期は2年から3年です。鉛バッテリーが寿命になる前に早めの交換を実施してください。車室内に搭載されている排気ホースが付いている鉛バッテリーの場合、確実に排気ホースを取付けて、車外へガスを排出させるようにしてください。鉛バッテリーの補充電は屋外などの通気の良い場所で行ってください。(通気の悪い場所で鉛バッテリーを使用しないでください)

9.硫化水素が発生しているかどうかは、どうやって分かりますか?

硫化水素は腐卵臭がするため、匂いで判断できます。ただし、高濃度の硫化水素で臭覚麻痺の症状が起きると言われています。

10.硫化水素とは何ですか?

刺激臭(腐卵臭)のある無色の有毒ガスで、空気より重く、中毒死に至る場合があります。

11.鉛バッテリーから異臭がした場合、どうすればいいですか?

異臭がした場合は、すみやかに充電を停止し、十分に換気を行ってください。異臭がした鉛バッテリーは使用しないでください。

12.硫化水素を吸った時の人体への影響は? 処置はどのようにすれば良いですか?

臭覚麻痺や死亡に至る場合があります。処置については直ちに医師の指示に従ってください。

13. どこのメーカーの鉛バッテリーでも硫化水素が発生するのですか?

どのメーカーの鉛バッテリーでも使用方法を誤ると硫化水素が発生します。鉛バッテリーを正しく使用した際には発生しません。

14.鉛バッテリー以外で硫化水素が発生するバッテリーはありますか?

一般的に市販されているバッテリーでは、鉛バッテリー以外にありません。

(液量点検)
15.液量が確認できない鉛バッテリーは、どのように扱えば良いですか?

鉛バッテリーまたは車両の取扱説明書を確認してください。販売店で点検を受け、必要により補水をしてください。鉛バッテリーが寿命になる前に早めの交換を実施してください。

(用途外)
16.エンジン始動用ではないのですが、同型式の鉛バッテリーの購入・交換を予定しています。使用上問題ないかどうか、どこに確認すればよいですか?

鉛バッテリーを搭載する機器(車両)の取扱説明書を確認してください。また、購入予定の鉛バッテリーの販売会社・メーカーへお問い合わせください。

(車室内搭載/一括排気構造)
17.硫化水素を車外に排出させれば安全なのでしょうか?

通気の良い車外にガスを排出すれば問題ありませんが、一括排気構造の鉛バッテリーに排気ホースが正しく装着されていることを確認してください。鉛バッテリーが寿命に近い、液量不足、過充電などの硫化水素が発生する可能性がある条件で使用しないでください。

18.購入した鉛バッテリーに排気ホースが付属されていません。どうしたら良いですか?

補修用の鉛バッテリーには排気ホースは付属されていません。車両側に装着されていなければ、車両販売店にご相談ください。