広域処理

1. 産業用蓄電池のリサイクル、適正処理の目的

近年、地球環境を保護し人間生活との調和を図ることが、健全な環境を次世代に引き継ぐために、最も重要な課題になっています。

ところで、私たちの身の回りに非常用電源やその他重要電源としての多くの産業用蓄電池が使用されています。これらは鉛やカドミウム、プラスチック等で作られており、リサイクルすることにより、新たな蓄電池の原材料に再生されています。

一方、これらの蓄電池は希硫酸、アルカリ液を電解液として含んでおり使用済みとなった際には環境に悪影響を及ぼさないよう適正な処理・処分が必要となります。

2. 産業用蓄電池のリサイクル、適正処理の法的根拠

環廃産発第050330009号「使用済鉛蓄電池の適正処理について」(平成17年3月30日)中の「使用済鉛蓄電池の取扱いに関する技術指針」では、使用済み蓄電池中の電解液は、特別管理産業廃棄物に該当する旨の記述があり、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(以下「廃棄物処理法」という)に則って、使用済み蓄電池は特別管理産業廃棄物として扱わなければなりません。

「廃棄物処理法」の規定どおり適正に運用するために、排出事業者には「業の許可を得た収集運搬業者と処分業者との契約」や「マニフェストによる受渡し管理及び5年間の保管」等いろいろな対応が求められます。国内蓄電池メーカはユーザーの利便性向上のために使用済み蓄電池についても適切な提案を行っています。

本内容が、お客様及び蓄電池の工事業者(元請業者等)による、使用済み蓄電池の適正な処理にお役立て頂ければ幸いです。

3. 使用済み産業用蓄電池の実際について

廃棄物処理法では、「事業者はその事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない(第三条第1項)」と定められています。使用済み産業用蓄電池は、お客様(排出事業者)が適正に処理することが法により求められています。

通常、お客様自ら処理設備等を備えていないため、広域認定者に処理を委託するか、もしくは処理業者に処理を委託することになります。(費用をご負担頂くことになります。)

一般社団法人 電池工業会の会員である蓄電池メーカは、企業の社会的責任(CSR)の一環として循環型社会の形成へ向けた貢献を目指しており、使用済み蓄電池の適正処理のため企業責任を積極的に果たす手段として「広域認定制度(廃棄物処理法第十五条の4の3 産業廃棄物の広域的処理に係る特例)」において環境省より広域認定を取得しています。この認定は、共同申請により、全てのメーカ製品を処理することができる画期的な方法であり回収率の向上と適正な処理を推進します。(広域認定制度とは、拡大生産者責任にのっとり、製造事業者等自身が自社の製品の再生又は処理の行程に関与することで、効率的な再生利用等を推進するとともに、再生又は処理しやすい製品設計への反映を進め、ひいては廃棄物の減量及び適正な処理を確保することを目的として、廃棄物処理業に関する法制度の基本である地方公共団体毎の許可を不要とする特例制度です。)

一般社団法人 電池工業会の会員である産業用蓄電池メーカは、広域認定制度に則った処理で産業用蓄電池のリサイクルを推進します。

4. 広域認定によるリサイクルシステムの活用について

お客様は、広域認定を取得した蓄電池メーカ等へ処理を委託することができます。排出事業者であるお客様又は工事業者(元請業者等)は、広域認定事業者である蓄電池メーカ等と委託契約を締結することにより、お客様又は工事業者(元請業者等)から使用済蓄電池を引取り、処理します。よって、お客様又は工事業者(元請業者等)は直接収集運搬業者及び処分業者と契約する必要がありません。

但し、蓄電池に含まれる電解液は強酸、強アルカリであるため特別管理産業廃棄物に該当します。

また、広域認定制度では、産業廃棄物管理票(官製マニフェスト)を交付しなくてもよいことが法令で定められています。ただし、広域認定制度では管理票等により管理することが広域認定の手引き(環境省)に示されています。

《廃棄物処理法施行規則》

産業廃棄物管理票の交付を要しない場合
第八条の19の五
法第十五条の4の3第一項の認定を受けた者(その委託を受けて当該認定に係る産業廃棄物の当該認定に係る運搬又は処分を業として行う者(同条第2項第2号に規定する者である者に限る。)を含む。)に当該認定に係る産業廃棄物の当該認定に係る運搬又は処分を委託する場合。
(法第十五条の4の3第一項の認定が広域認定である。)

5. お客様が広域認定を使用せずに廃棄物処理業者へ直接委託する場合

お客様が、排出事業者として使用済み蓄電池(廃棄物)を排出する場合には、「廃棄物処理法」の適用を受ける為に、適正に回収され、再資源化処理されることが必要です。更に電解液は強酸、強アルカリであるため特別管理産業廃棄物に関する配慮も必要です。

「廃棄物処理法」により、排出事業者(お客様)に対しては自らの事業に伴って生じた廃棄物について処理責任が求められます。

(排出事業者の責務)

  • 特別管理産業廃棄物管理責任者の設置が必要です。
  • 収集運搬業者、処分業者それぞれと処理委託の契約締結が必要です。
  • 産業廃棄物管理票(官製マニフェスト)の発行・管理が必要です。
  • 年一回、所轄自治体への報告が必要です。
  • 県外への持ち出し時は、受け入れ先自治体との事前確認(事前協議)が必要な場合があります。

6. その他

(1)保管

使用済み蓄電池であっても電気エネルギは残っている場合がありショートによる焼損、転倒による電槽破損と電解液の流出、火気による蓄電池内残留ガスの引火爆発等の危険を防止する為、みだりに人が近づかない場所に、転倒防止を配慮した保管方法が必要です。

特に段積みを行う場合は、ショートや電槽破損をさけるため蓄電池上部に付いている、極柱・液口栓・触媒栓等の突起物に蓄電池或いはパレットを直接載せないでください。
又、土壌汚染を防ぐために床は防水構造とし、雨水が掛からないようにしてください。蓄電池がすでに破損し電解液漏れが予測される場合は、蓄電池をプラスチック容器等に入れ電解液の流出を防いでください。

(2)運搬

前項の保管と基本的に同じですが、運搬中に荷くずれをすると、公の場所でショートによる焼損・爆発や電解液が飛散する等、被害が大きくなることがありますので転倒・荷くずれ防止策について関係者に周知徹底する必要があります。

(3)事故発生時の対応についての周知徹底

電解液が、目に入った場合・皮膚に触れた場合・道路や車上に飛散した場合等、万一事故が発生した場合の処理方法(中和剤の準備等)を事前に関係者に周知徹底しておく必要があります。